覆水盆に返らず

斎藤正男氏

 関連事業者とは、市場において青果や水産や花卉以外での食品・サービスを提供する者をいいます。

 昨年の震災では、我々は貴重な経験をさせられました。今の社会は危うい形で成り立っているということが露呈しました。企業は効率の名のもとに在庫を極限まで推し進めた結果、震災で物流が止まるとたちまち物不足の事態に襲われました。大手企業ほどその影響は大きいものでした。買う場所を失った消費者は小売店に押しかけました。その結果その仕入れ先である市場が、一時的には最も物が豊富な所となったのです。しかも大手メーカーでは包装資材が不足し、物が作れない状況に陥りました。計画停電が更に追い打ちをかけ、特に納豆、モヤシ、ヨーグルト等、生産に長時間電気を要するものが大きな打撃を受けました。小さなメーカーは停電が収まるとすぐに再開できましたが大量供給は出来ず、その結果大型小売店から多くの物が消えたことは記憶に新しいでしょう。その後、大手小売店の業績の回復は目覚ましく震災の影響が感じられないほどになりました。

 その一方原発事故による放射線の問題は多方面に多くの課題を残しました。過去に中国産が悪いレッテルを貼られたように、今は福島産が取って代わるようになりました。地元の学校や幼稚園・保育園の給食から福島産が、保護者からの要望に従うことで敬遠されていると聞きます。我々は原発事故の前の状態に戻ることは出来ません。農業生産者や地元食品メーカーに与える影響を考えると、この事態は憂いざるを得ません。このままでは福島の未来は描けません。じり貧となって活気を失っていくことが心配されます。消費者と生産者の間に立つ我々流通業者が果たすべき役割ではないかと忸怩(じくじ)たる思いでおります。この問題が早く解決することを切に願ってやみません。

平成24年6月15日